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系統用蓄電池補助金の要件、広域認定とJC-STARへの実務対応

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令和7年度補正の系統用蓄電池補助金は2026年9月4日に公募が始まり、11月4日17時に締め切られる。交付申請時点で求められる廃棄物処理法の広域認定とJC-STAR(セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度)の★1は準備に数か月を要し、今回の締切に間に合わない企業も多いと考えられる。本稿では、両要件の中身と年度ごとの強化の傾向を整理し、今回の申請と次年度以降の公募に向けた対策を示す。
なお、本稿は執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII: Sustainable open Innovation Initiative)の公募要領等の公表資料に基づく。採点審査の配点は公表されていない。申請判断の際は公募要領の原本と最新のお知らせを必ず確認されたい。また、次年度以降の公募の有無・時期・要件は現時点で公表されておらず、本稿の次年度以降に関する記述は過去3回の公募要領の傾向に基づく推論である。

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系統用蓄電池補助金要件の前年度からの強化点

系統用蓄電池補助金の令和7年度補正の制度は、令和6年度以降に段階的に強化されてきた足切り要件を維持しつつ、中規模のリチウムイオン電池(Lithium-ion Battery、以下LiB)案件と6時間未満の長期エネルギー貯蔵システム(Long Duration Energy Storage、以下LDES)の補助率を下げた点に特徴がある。正式名称は「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金」で、SIIの事業名は「系統用蓄電システム等導入支援事業」である。
対象は系統に直接接続する最大受電電力1,000kW以上の新設蓄電システムで、需要家側への設置や発電所との併設は対象外となる。SIIの公募要領によれば、補助率と上限額は次のとおりである。

区分補助率補助上限額
(1申請あたり)
① LDES導入に関わる設計費・設備費・工事費
※LiB以外の蓄電池(レドックスフロー)、水電解水素貯蔵、液化空気蓄電、重力蓄電、蓄熱 等
最大受電電力が1,000kW以上かつ6時間容量未満1/2以内20億円
最大受電電力が1,000kW以上かつ6時間容量以上2/3以内20億円
② リユース蓄電池に関わる設計費・設備費・工事費
※電動車等の駆動用に製造されたリユースを含む
最大受電電力が1,000kW以上1/2以内20億円
③ LiBの蓄電システムに関わる設計費・設備費・工事費最大受電電力が1,000kW以上10,000kW未満1/3以内10億円
最大受電電力が10,000kW以上30,000kW未満1/3以内25億円
最大受電電力が30,000kW以上1/2以内40億円

令和6年度・令和7年度当初からの主な変更点は次のとおりである。

項目令和6年度令和7年度当初令和7年度補正
LiB 10MW以上1/2・40億円1/2・40億円10〜30MWは1/3・25億円、30MW以上は1/2・40億円
LDES2/3・20億円2/3・20億円6時間未満1/2、6時間以上2/3
広域認定事業完了までの取得で可(地方環境局の了解が条件)交付申請時に取得済みが必須交付申請時に取得済みが必須
JC-STAR要件化なし★1必須★1必須、★2が運用開始されれば供給力提供開始(運転を始めて供給力を提供し始める時点)までに取得
経済安全保障—要領上の明記を確認できず採点審査項目として明記

比較表のとおり、広域認定は「事業完了までに取得」から「交付申請時に取得済み」へ前倒しされ、JC-STARは要件化なしから★1必須、さらに★2への将来対応へと段階的に強化されてきた。次年度以降の公募も、この方向が続く前提で準備するのが現実的と考えられる。

10〜30MWのLiB案件は、令和7年度当初の条件で収支を組んでいると補助額が大きく目減りする。規模を30MW以上にするか6時間以上のLDESにするかで補助率が変わり、設備規模そのものが戦略変数になったといえる。

予算は本事業を含む蓄電池関連3事業に共通する616億円の内数で、うち2026年度分は約80億円とされる。申請は引込線ごとに1件、1社あたり共同申請を含めて2件までで、複数案件を持つ事業者はどの2件を出すかの選定が要る。

ブライトイノベーション作成資料に基づく、系統用蓄電池補助金の公募期間・単年度・複数年度事業のスケジュールと、グリッドコードにおけるJC-STAR★1要件化のタイムラインを示したチャート
図1:補助金スケジュールとグリッドコードでのJC-STAR★1要件化までのタイムライン
(ブライトイノベーションにて作成)

単年度事業の完了期限(2027年2月18日)は交付決定(2027年1月上旬予定)から約1.5か月しかなく、連系承諾、設置、試運転・検収、支払完了を要するため、2年度事業(2028年1月19日)や3年度事業(2029年1月19日)での申請が中心になると考えられる。

広域認定は交付申請時点で取得済みであることが前提になった

広域認定の要件は「交付申請の時点で認定を持つ供給事業者がいるか」に集約され、その供給事業者を構成に入れられなければ今回は間に合わない。次年度以降は、調達先に新規取得を求め、取得時期を調達条件に入れることが申請事業者のとれる手になる。設備供給事業者の側から見れば、認定の保有とその範囲が、補助金案件の構成に選ばれる条件である。

制度の仕組みと補助金での求め方

補助金では、設備供給事業者のいずれかが、選定したセル・モジュール・電池システム・蓄電システムのいずれかについて認定を取得していることが求められる。対象機器は蓄電システム、電池システム、モジュール、セルの順に優先され、認定書類は交付申請時の必須添付書類である。令和6年度は、地方環境局の了解があれば事業完了までの取得で足りたが、この猶予は令和7年度当初から廃止された。

新規取得のリードタイムと次回公募からの逆算

環境省の「広域認定制度申請の手引き」によれば、手続きは地方環境局への事前相談、環境省での事前確認、申請・審査の順に進む。新規申請の標準処理期間は3か月で、所要期間が示されていない事前確認はこれに含まれない。次回公募の時期は未公表だが、事前確認の期間が読めない以上、新規取得を検討する供給事業者は、公募開始を待たずに地方環境局への事前相談に入ることが現実的である。

認定範囲と廃棄時の委託で抜けやすい2点

第一に、認定の範囲(廃棄物の種類・区域)と導入機器の一致で、ずれていれば変更認定が要る。認定を持つ供給事業者は、案件の機器と設置区域が認定範囲に入るかを見積の段階で確かめたい。
第二に、認定の取得と、廃棄時に当該供給事業者へ委託する取り決めは別の要件で、後者は交付申請時に必須でないが別途必要である。供給事業者は、この取り決めを申請事業者に示せるよう用意しておきたい。
設備供給事業者が新規取得を検討する場合、広域認定の具体的な取得プロセス(事前準備と計画策定、環境省への申請と審査対応、認定後の運用と報告)と経営上のメリットは、別稿『広域認定制度の経営メリットと具体的な取得プロセス』で詳しく解説している。

JC-STAR★1はBMS・PCS・EMSの型番単位で問われる

JC-STAR★1は主要制御機器の型番ごとに機器メーカーが取得するもので、供給事業者の分担では代替できず、申請者側では短縮もできないため、機器選定への影響が大きい。

補助金が求める★1の範囲

JC-STARは、情報処理推進機構(IPA)が2025年3月に運用を始めた制度で、★1は統一的な最低限の基準と位置づけられている。補助金では、電池管理システム(BMS: Battery Management System)、パワーコンディショナ(PCS: Power Conditioning System)、エネルギー管理システム(EMS: Energy Management System)等の主要制御機器に★1の取得を求める。
IP通信機能を持たない機器はプロトコル変換機器を組み込んだ構成で★1を取得し、クラウドなど取得対象外の機器は同等の対策を講じていることを説明資料で示す。★1取得内容との整合を示すシステム構成図の提出も必要である。

グリッドコードより先に来る要件と★2への備え

資源エネルギー庁は第21回グリッドコード検討会の資料で、IP通信を使う制御システム(PCS、EMS等)に★1取得製品の使用を求める方針を示した。太陽光・蓄電池は特別高圧・高圧が2027年4月、低圧が2027年10月からである。補助金はこれより早く、2026年11月の交付申請時点で★1を求めることになる。
さらに補助金では、★2の基準が運用開始され取得対象となった場合は、供給力提供開始までの★2取得も条件とされるため、2〜3年度事業ではメーカーの★2対応方針を調達契約に織り込むことが考えられる。

採点審査で評価される項目と予算制約下の競争

足切り要件を満たしても採択は保証されず、予算の範囲内での採点審査の順位が結果を左右する。公募要領では、以下の項目が総合評価の中で採点される。

審査項目評価される内容
4-① 火災等に対する安全性対策JIS C 4441・IEC 62933-5-2の認証、または第三者機関によるJIS C 4441のリスクアセスメント評価など
4-② 情報セキュリティERABガイドラインVer3.0の4.1.3に基づく第三者評価・認証
4-③ レジリエンス電池セル等の代替部品を迅速に供給できる拠点
4-④ サプライチェーン供給確保計画(経済安全保障推進法に基づく計画)の認定メーカーが自社拠点で製造したセル(OEMは対象外)
5-① 省エネ情報開示供給事業者の省エネ情報開示
5-② 資源循環高いレベルのリサイクルの実施計画
5-③ 騒音騒音対策
5-④ 創意工夫地域貢献の観点

系統連系協議の進捗、工期の妥当性、ビジネスモデル等も評価される。4-②の根拠であるERABガイドラインVer3.0(資源エネルギー庁・情報処理推進機構の『エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスに関するサイバーセキュリティガイドライン』)は、重要度Aに分類されるシステムについて、IEC 62443-2やISO/IEC 27001等の第三者認証を強く推奨している。アグリゲーターやO&M事業者の選定時に認証の有無を確認すれば、4-②の評価につながると考えられる。

申請準備で詰まりやすい3つのボトルネックと解決策

公募要領の要件から見ると、詰まりやすいのは次の3点と考えられる。

ボトルネック想定される事象解決策
供給事業者の構成GX・賃上げ要件と広域認定を同じ1者で満たせない要件ごとに担い手を割り当て、構成図で示す
海外製BMS・PCSの★1一部の海外メーカー製品で、採用予定の型番の★1取得が確認できない★1取得済みの機器やゲートウェイへの切り替え、プロトコル変換構成
リードタイム事故履歴資料の取り寄せや相見積3者の確保が遅れるメーカー交渉と見積依頼を次回公募の開始前から準備

要件ごとに担い手を分ける構成設計

供給事業者要件(GX要件1〜4: 温室効果ガス削減、削減効果の定量把握、取締役会決議を経た国際競争力のロードマップ、賃上げ)は、すべてを満たす事業者が1者以上いればよい。要件1(温室効果ガス削減の取組)は、GXリーグ参加者なら実施済みとみなされ、2026年度以降はGXフューチャー・リーグへの参加と排出量実績の報告が求められる。広域認定も供給事業者のいずれかが満たせばよい。公募要領は認定の対象を蓄電システム、電池システム、モジュール、セルの順に優先しており、蓄電システム単位で認定を持てる蓄電池システムメーカー(海外メーカーの日本法人を含む)や国内のSIer・EPCが広域認定を担う構成が現実的といえる。セル・モジュール・電池システムの第三者認証(JIS C 8715-2またはIEC 62619)、類焼試験の証明、事故履歴資料の提供は、セルや電池システムのメーカーが担う分担が、要件の文言上は考えられる。

供給事業者の側から見ると、GX要件1〜4と広域認定を1者で引き受けられる蓄電池システムメーカーやSIer・EPCは、構成の中心に置かれやすいと考えられる。みなしが要件1に限られる以上、受注を目指す供給事業者は要件2〜4の体制と取締役会決議、GXフューチャー・リーグへの参加を、次回公募から逆算して準備したい。
供給事業者だけでなく、申請者にも、CO2排出量20万t以上の企業にはGX関連の条件が課される。SIIは2026年6月23日、今後GX予算を使う補助事業はGXフューチャー・リーグ会員であることを応募要件とする方針を示しており(中小企業を除く)、自社の参加状況も確認したい。

ブライトイノベーション作成資料に基づく、系統用蓄電池補助金におけるステークホルダー(申請者、蓄電池システムメーカー、セルメーカー、制御機器メーカー)別の要件対応と役割分担を示したマトリクス図
図2:要件ごとのステークホルダー別役割分担の構成例
(ブライトイノベーションにて作成)

海外製制御機器と見積確保の詰まり

一部の海外メーカー製品は★1取得が確認できない場合があるため、採用予定の機器はIPAの取得製品リストで型番ごとに早期に照合し、未取得なら取得済み機器への切り替えやプロトコル変換構成を検討する。
見積は3者以上から取り、最低価格が補助対象経費の上限になる。型番指定ができないなかで、広域認定とJC-STARを満たす見積先を3者そろえる必要があり、サプライヤーが限られると見積確保自体が制約になりうる。交付決定前の契約・発注が補助対象外である点も調達日程に織り込みたい。

まとめと次年度以降に向けた次の一歩

令和7年度補正の系統用蓄電池補助金では、広域認定とJC-STAR★1が交付申請時点の足切り要件となり、その先の採点審査で安全性、情報セキュリティ、サプライチェーンなどが評価される。令和6年度からの推移を見ると要件は年度ごとに前倒し・強化されており、公募開始後の準備では間に合いにくい。

今回申請する企業は、供給事業者の広域認定の対象範囲と、BMS・PCS・EMSの型番のJC-STAR★1取得状況を最終確認したい。今回を見送る企業は、次年度以降の公募に向けて、広域認定の新規取得または保有事業者との連携、★1取得製品と★2対応方針を前提にした機器選定、自社のGXフューチャー・リーグ参加と供給事業者のGX要件(取締役会決議を経たロードマップ等)の確認に着手し、採点審査の項目でもある系統連系協議も先行させたい。

補助金案件の受注を目指す設備供給事業者は、自社の広域認定の有無と範囲(対象機器の単位、廃棄物の種類・区域)を確かめ、未取得なら地方環境局への事前相談から着手したい。GX要件2〜4の充足とGXフューチャー・リーグへの参加状況も、申請事業者に示せる形に整えておきたい。

参考資料

【サーキュラーエコノミーに関するコンサルティング支援】
ブライトイノベーションでは、方針・戦略策定から、目標・KPIの設定、ISO 59000シリーズやGCPへの対応、広域認定やISCC PLUS認証の取得まで、企業のフェーズと現場の実態に合わせた実務化・情報開示を一貫して支援しています。

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この記事の監修者

江戸 義和
コンサルタント
江戸 義和 Yoshikazu Edo
リサイクル会社や廃棄物管理会社にて環境ソリューション事業開発に従事後、ブライトイノベーションに参画。主にサーキュラーエコノミーモデル構築、広域認定制度取得支援などを担当。
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